日常生活はテストじゃない
朝から晩まで、「できる/できない」なの?
できるようになったら「ラッキー」です。
ヒトは未熟な状態で生まれてきます。これは、野生の動物と大きく違う点です。
サバンナの真ん中で生まれた動物の赤ちゃんは、すぐに歩き始めます。
ヒトがきちんと歩行するには1年程度の時間がかかります。
基本的にヒトは、何もできずに生まれてきます。
「摂食」「睡眠」「排泄」という動物としての基本行為がほとんどです。
そして、生活環境と遺伝子に仕組まれたスイッチがONになることで、発達がうながされます。
運動能力も、感情表現も、すべて未完成で生まれてくるのがヒトなのです。
そして、ヒトとしての「完成」に基本的に答えはありません。(哲学的に完成と言える場合もあります)
そんな、なんにもできない赤ちゃんが、時間とともに、いろいろなことができるようになったら、それは「ラッキー」と思いましょう。「できない」が「できた」ことは、まるで奇跡です!
まさか、「X才Xヶ月になれば、できる」と信じていませんか?
平均値というのは、本当はとってもキケンで、だましやすいしくみです。
一般的にいわれる平均値と、我が子を比べるには慎重さが必要です。
東大生のテスト平均点と、地方の高校のテスト平均点が違っていても、おどろかないでしょう?
その子が、どんな状況にあるのか、どんな生育歴なのか、本人・家族の病歴は・・・
など、たくさんの情報を整理した上で、発達の程度を考えてみませんか?
「なぁーんだ、おねしょが、なかなか治らないのは、おとうさんと一緒か・・・」なんてことが、みえてくるかもしれません。
寝付きがわるい
寝かせようとするとご機嫌斜め。寝てもすぐに起きて・・・
ウィリアムズ症候群だけではない症状
1歳頃にもなると夜泣きの回数も減って、添い寝をしてしばらくすると、おだやかな寝息を聞くことができるのが一般的な子どもの入眠パターンです。
ウィリアムズ症候群の乳児期によくみられる特徴として、「なかなか寝付かない」「何度も夜中に起きて泣き止まない」ということがいわれています。
これで、多くのウィリアムズ症候群の親は、肉体的・精神的にまいってしまいます。あらゆる情報をあつめて、さまざまな手を尽くし、果てはおまじないまでしてしまう・・・。
その辺のことは、経験談をお待ちしています。
残念ですが、「これで必ず寝る!」という方法はありません。
小児に対して安易に睡眠導入剤等を継続的につかうことは望ましいことではありません。
まず、自己判断や家族・知人からの助言にふりまわされないようにしてください。
「日中に、しっかり遊ばせないからだ」とか「寝室の光・音・気温が良くない」とか、「抱き方、寝かせ方が悪い」やら「子守唄がヘタ!」なんてことまで、言われてしまうとたまりません。
育て方や環境のせいばかりではありません。
実際、知的しょうがい・発達しょうがい のある子どもには、「寝付かない」「何度も起きる」ということはたくさん報告されています。
これは脳の気質的な問題が影響しています。通常、リラックスしている時は副交感神経という神経が働いていて、脳内でも気持ちを安定させたり、眠たくなるような物質が働いています。ところが、この機能が働かない/働きにくい場合があります。
その場合は、医師にきちんと診察や検査をしてもらうべきでしょう。身体状況などの条件を満たしていれば、薬の処方もあるかもしれません。
とにかく、専門的なところに相談しましょう。
児童相談所は、必ずすべての都道府県と政令指定都市にあります。
その他にも、自治体が独自に「発達センター」や「療育相談センター」などの名称で相談する場をつくっているところがたくさんあります。
「子どもとのかかわり方」「すごす環境」「脳の気質的な問題」などが複雑にからみあって、現象が起こっています。
ですから、まずはじめに個々の状況をきちんと整理した上で、対処方法を考えていくのが良いと思います。
・・・と、ここまで書きましたが、自己流の方法を試して、相談するところを探して相談し、紹介された専門機関で検査をて・・・とするうちに、「時間が流れていきます」。
多くの経験者が語っていますが、「気づくとある時期から寝るようになっていた」といわれます。
成長が遅れている=赤ちゃんの夜泣きが続いている。とも、考えられるかもしれません。
ただ、本当になんらかの疾患で泣いている可能性はあるので、一度は必ず小児科等できちんと診察してもらってください。
育児雑誌に気をつけて!
出版社の最終目的は「出版社の収益」をあげることです。
DMや広告のマンガであわてていませんか?
現在は法規制により未承諾のダイレクトメールが制限されていますが、見かけるとどうしても気になってしまう育児雑誌。
たくさんの写真やイラスト、面白い投稿ネタからかわいいファッションまで、毎月飽きのこないように出版社は頑張っています。
確かに私も何度か読みました。子供用の付録でも遊んでみました。よく考えてあります。
子どもの「教育」と言う面では、身近な存在であることには間違いありません。
でも、どうしても1つだけ気になることがあります。
「育児雑誌」であって「療育雑誌」ではないということです。
根本的に療育が必要な子どもの親を不安にさせてしまう内容にいつも疑問を抱いています。
よくある漫画をつかったパンフレットのストーリーだと・・・
(起)主人公のお母さんとその子どもA君が登場。ママ友とその子どものBちゃんといっしょに遊ぶ。
(承)ここでA君のトラブル発生(読み書きができない、コミュニケーションがへた、など)
(転)しかしBちゃんは、英才ぶりを発揮。理由は通信教育のXXでキャラクターと楽しくお勉強。
(結)あわててA君のお母さんも、通信教育を申し込み。効果抜群でA君も能力向上、ママも安心。
という展開になることが、ほとんどです。
我が子がA君のような状態では、「不安」な気持ちになってもおかしくありません。
そして、どうにかしようとあせってしまう可能性があります。
能力の個人差や、教育環境で差が出ることは事実ですが、A君が知的しょうがいや発達しょうがいのある子どもだったら・・・どうでしょう?
毎月届く雑誌と付録は、あまり興味を示さないかもしれません。むしろ、それらを破いたり口に入れたりすることの方が、本人にとっては楽しいかもしれません。
DVDを見せても数分で飽きてしまうかもしれません。20分ほどのストーリーよりも、めまぐるしく変わるCMや天気予報のお天気マークのほうが、よっぽど見入る可能性があります。
本当にその子どもが興味を持つものは何か、よく、観察してみませか?
そして、それを効果的に療育に取り込む方法があるかもしれません。
「不安」は、「漠然とした不快な予期状態」(有斐閣 教育心理学小事典 初版より)です。
「漠然とした」状態を改善するには、冷静な観察が必要です。
「不快」は本能的なものなので、普通に生活している私たちには、簡単に抑えられません。
「予期」は、思考の焦点が未来にあるということです。つまり「今」について考えていません。
まず始めにすることは、むやみに教材を与えることではなく、現状を把握することです。
精度の高い地図とコンパスがあっても、現在地が分からなければ目的地までたどりつけません。
とはいっても、家族にとって冷静に見極めるのはむずかしいかもしれません。
だからこそ、専門機関で相談することを提唱します。
本人と家族に「安心」を提供することができるのが、優秀な専門機関です。
脱!紙パンツ
トイレで排泄するメカニズム
梅雨が明けると、本格的な夏がやってきます。
キンキンに冷やしたビールの時期になると、私は「そわそわ」します。
お酒には利尿作用があるので、お酒を飲むとトイレの回数が増えてしまいます。
飲みたい「そわそわ」と、出したい「そわそわ」の二重奏状態になってしまいます。
さて、この時期は、紙パンツを愛用しているちびっ子には、紙パンツ卒業の良い機会です。
汚れた下着も、ぬれた布団もよく乾くので、1年のうちで一番「脱!紙パンツ」に適しています。
そこで「脱!紙パンツ」に挑戦する前に、排泄のメカニズムの基本を押さえておきましょう。
一般的な「排泄」には2種類あります。【尿】と【便】です。
この2つには、それぞれのアプローチが必要です。
おしっこ編
ヒトの体に含まれる水分は塩分を中心にさまざまなミネラル成分が含まれています。これは、生物が海中で発生したなごりですので、私たちは皆、体の中に海をもって生きています。
生物は、この体内の「海」の中ですごすことが最も安定するので、「海」の状態に敏感です。
ですから、汚れたり、濃すぎたり、薄すぎたりすると、さまざまなホルモンや神経伝達物質が働いて調節しようとします。
尿はその結果で、体に不要なものや余分な水分を体の外にだすことで体の安定(恒常性)が保たれます。
腎臓や下垂体などに異常がない限り、尿は正常につくられ、膀胱(ぼうこう)に貯まります。
簡単なイラストをつかって、尿ができてから、トイレに行くまでの課程を考えてみましょう。

イラスト解説
赤い線は「脳と排泄器官」を結んでいる神経を表しています。
2つの黄色いものが「腎臓」(※1)で、尿をつくる場所です。
下の青い袋が「膀胱」(※2)で、尿のタンクです。
顔の絵の上にあるのは、「脳での考えや、脳から体への指令」(※3)を表しています。
(※1)腎臓では、流れてきた血液中の汚れを濾過して、どんどん尿をつくっています。しかし、体内の水分を一定に保つためにバソプレッシンというホルモンの一種や神経で脳とやり取りをして、尿をつくる量を調節しています。この機能が働かないと脱水になってしまいますが、ウィリアムズ症候群が原因で、これが機能しないことはほとんど考えられません。
(※2)膀胱の大きさには個人差がありますが、膀胱がある程度いっぱいになると、脳へ信号が送られます。脳はこの信号を受け取って「排泄物が貯まったな」と判断します。これが「尿意」です。
神経性の疾患がない限り、信号は流れるので、ほとんどのウィリアムズ症候群の人は「尿意」を感じることができます。
下腹部を押さえてゴソゴソしたり、手足を平常時よりバタつかせたり、小刻みなジャンプがみられるのであれば、尿意を感じていると判断できます。
(※3)軽度から中程度の知的しょうがいを伴うウィリアムズ症候群などのトイレでの排泄習慣の定着の遅れは、この脳の働きによるものが主な原因です。
「尿意」を感じると「尿を出せ」という命令を脳がだすので、それが紙パンツだろうと、どこであろうと脳が働いている証拠です。これが働かないと、常に少量ずつ尿が出続ける状態になります。
経験と関連づけ
(STEP 1)
紙おむつ卒業のためには、「ぬれて気持ち悪い」という経験が必要です。
不快を回避しようとするのは本能なので、強い動機づけになります。
「どんどん吸収、いつもサラリときもちいい」紙おむつでは、不快につながりません。
つまり、おしっこをすると気持ちが悪い経験を積ませてやる必要があります。
(STEP 2)
そこで、ある程度の投資と努力が必要になります。投資については、紙おむつを買い続けることと比較すると、はるかに安い投資です。
投資するものは「布パンツ」と「薄手のズボン/スカート」です。要するに、必ず失敗をするので、着替えをたくさん準備しようということです。(濡れたことが分かる尿パッドも併用できます)
セレブでなければ、デザインなんか気にせずにワゴンセール品をどっと買い込んでおきましょう。
余裕があれば靴下の替えも検討してください。夏なので靴下は不要かもしれませんね。
靴はゴム製やメッシュ製のものをお勧めします。足下まで濡れた時に、乾きやすいですから。
努力は、急激に増える洗濯物を処理する手間に対して払ってください。
幸いにもウィリアムズ症候群の子どもたちは、皮膚の感触に対して敏感です。つまり、濡れたという感触に対して大きい反応を示すことが期待されます。それが濡れて嫌がっている反応なら、作戦成功です。
(STEP 3)
おもらしをしたら、できるだけトイレで着替えるようにしてください。状況によりできない場合は、トイレの写真や絵を見せながら着替えさせてあげましょう。
本来、動物は「出したい時にどこでもかまわず出す」というのが自然の姿です。
不自然なことを習慣づけようとしているのですから、「排泄」と「トイレ」を脳内で関連づけさせてやる必要があります。
「関連づけ」は「繰り返し」によって強化されます。
繰り返されることでそのシチュエーションに対面した時に働く脳神経が発達するからです。
ベルが鳴るとよだれが出る、「パブロフの犬」と同じ原理です。
実体験への移行
(STEP 4)
いよいよ、トイレでの排泄に取り組んでいきます。
出ても出なくても、定期的にトイレへ連れて行くことは、有効な手段です。
教える方も定期的な時間を忘れがちなのでタイマーを利用すると、確実です。
最低でも1時間に1回はチャレンジする価値があります。
体調によっては、もっと短いサイクルで繰り返してみると成功する場合があります。
ただし、タイマーの合図は子どもに分かりにくいようにする工夫をしなければならないでしょう。
なぜなら「タイマーがなると排泄する」という関連づけがなされる可能性があるからです。
さあ、それぞれのやり方で、トイレで排泄する格好をしましょう!
「トイレで、こうやって、おしっこしようね。おしっこ、でるよ。」などと声かけをしながらすると、効果的だと思われます。動作と場所の関連づけが強化されるからです。
(STEP 5)
当たり前のことですが、成功したら、喜びを分かち合いましょう。
可能な限り、介助する「人」が喜んであげて、声をかけてあげてください。
成功したら、おもちゃのスイッチを入れて台詞と音楽を流すだけでは、「成功体験による喜び」と「おもちゃの楽しさ」の区別がつきにくくなる場合があるからです。
「人に受け入れてもらう」ということは、最高の動機です。
卒業の時期
上記の通り実行して、1シーズンで成功するとは限りません。また、何才ころになれば・・・ということもわかりません。
トイレという限られた場所のみで排泄させようとすることが、いかに高度なことかを理解した上で、挑戦してみてください。草むらや小川でちょっと用を足す、ということさえ難しくなってきた現在の社会状況は自然から大きくかけ離れているのですから。
紙パンツ卒業の時期は、みんな未定です。
ある重度の知的しょうがいの子どもが「重度の知的しょうがいにより、排泄の判断ができないため、常時紙おむつを必要とする」という旨の医師の意見書をもらったにもかかわらず、数ヶ月後には卒業をしたケースもあります。
人間にとってベストなトイレライフは、はたしてどんなものなのでしょう?

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