大動脈弁狭窄症
大動脈弁狭窄症(AS/ aortic stenosis)
もっとも特徴的な、心疾患です。
ウィリアムズ症候群の、ほとんどの人にみられる疾患です。
大動脈弁狭窄は、狭窄の位置によっておおきく3つに分けられます。
「大動脈弁性狭窄」:大動脈弁の上(心臓から体へ流れ出る側)が狭くなっている。
「大動脈弁上狭窄」:大動脈弁の部分が狭くなっている。
「大動脈弁下狭窄」:大動脈弁の下(大動脈弁と左心室の間)が狭くなっている。
詳しい説明は、別項目でするとして、いずれの場合も、症状の程度には個人差があります。
乳幼児〜幼少期の速い段階で、手術を必要とする場合や、成人しても定期的な検査程度ですむ場合があります。
症状としては、胸の痛み・呼吸困難・失神などがあります。
これらの症状が現れた時は、すぐに医療的な処置をとってください。
心臓から全身に血液が流れる際に、出口が狭くなっているため、圧力がかかります(血圧が高くなります)。心臓の左心室という部分から、大動脈を経由して全身に血液が行き渡るので、大動脈に狭窄があると左心室に負担がかかります。この負担に耐えるために、左心室は自然にその壁を厚くして肥大する傾向があります。そのため、心臓を取り巻いている血管(冠動脈など)にも影響がおよんでしまい、心肺機能が低下し、重症化すると上記の症状がでてしまうしくみになっています。
いずれにせよ、ウィリアムズ症候群の場合は、心臓の定期的な検査がすすめられます。
青年期までは、心臓自体が自然に成長をしているので、血管が自然に広くなり、症状が出にくいこともあります。
心臓の成長の速さ > 狭窄の進行の速さ :経過観察
心臓の成長の速さ = 狭窄の進行の速さ :検査頻度を増やす・精密検査の検討
心臓の成長の速さ < 狭窄の進行の速さ :精密検査・医療処置の検討
肺動脈狭窄症
肺動脈狭窄症(PS/ pulmonic stenosis)
多くのウィリアムズ症候群でみられます。
大動脈の狭窄と同様に、肺動脈にも狭窄があることが、よくあります。
体から集められた血液が心臓(右心室)に集まり、肺へと送られる間の血管に狭窄がある症状です。
肺動脈狭窄症は狭窄の位置によって大きく4つに分けられます。
「肺動脈弁狭窄」:右心室と肺動脈の間にある弁のある部分が狭くなっている状態です。
「肺動脈弁上狭窄」:心臓から弁を出てた所の周辺が狭くなっている状態です。
「肺動脈弁下狭窄」:弁よりも、心臓側が狭くなっている状態です。
「肺動脈抹消狭窄」:肺動脈弁から肺へ、血管が枝分かれした先が狭くなっている状態です。
大動脈狭窄と同様に、右心室に圧力がかかるため、右心室が肥大することがあります。
呼吸に関する重要な血管ですので、症状が悪化すると、呼吸困難・激しい動悸がでてきます。
顔が青ざめて、息をしにくそうにしていると、注意してください。
重症になるとチアノーゼ(酸素不足で全身が紫色おびて、危険な状態)が起きることがあるので、救急車を呼ぶなどの、医療処置を急いでください。
ウィリアムズ症候群の場合,成長にともない肺動脈狭窄が自然治癒することも少なくありません。
大動脈とあわせて、よく検査してもらいましょう。
【入門編】心臓のしくみ
そもそも、心臓ってなんだっけ?
循環器の病気を知るには、心臓のしくみから・・・
「大動脈」や「左心室」だの、「大静脈」や「右心室」だの、ややこしいですね。
理科嫌いの方には、頭のいたい話かもしれません。
しかし、ここはウィリアムズ症候群の命に関わることなので、基本だけ覚えておくと、もしもの時にも慌てないで話を聞くことができるかもしれません。
基本は2つのことを、覚えておけばOKです。
【その1】
まず、心臓の役割は、血液をからだじゅうにめぐらせるためのポンプです。
そして、心臓は「体全体」と「肺」と連携して動いています。
【その2】
動物は息を吸って、体に酸素を取り入れます。
動物は酸素をつかって、生きるエネルギーをつくります。
同時に、エネルギーをつくった搾りかす(二酸化炭素)が、すてられます。
動物は息を吐いて、二酸化炭素を外に捨てます。
この2つがわかれば、あとは簡単です。
酸素と二酸化炭素を運ぶのが血液。そして、その血液を動かしているのが心臓というわけです。
【入門編】心臓のつくり
心臓をのぞいてみよう
心臓なのでハート形で説明。
心臓は、立体的で複雑な形をしています。かなりデフォルメすればハートに見えないこともありませんが、本物はハート型とはほど遠い形をしています。
でも、これは入門編なのでカワいくハートの形で心臓のつくりを説明しましょう。
(まず、【入門編】心臓のしくみ を読んでからにしてください)
心臓は、4つの部屋からできています。
[A]の部屋が「右心房(うしんぼう)」
[B]の部屋が「右心室(うしんしつ)」
[C]の部屋が「左心房(さしんぼう)」
[D]の部屋が「左心室(さしんしつ)」
です。
え?左右が逆じゃないかって?
いえいえ、これは相手の胸を正面からみた状態です。
ですから、こちらの右側は、みられる側にとっては左側です。鏡と同じですね。

(1)から、二酸化炭素などを多く含んだ汚れた血液が帰ってきます。
この玄関口が[A]の右心房です。ここで、1回に処理ができるだけの量を受け入れます。
(2)つぎに[A]から[B]右心室へ、血液を流し込みます。
ここで、圧力をかけて、受け入れた血液を肺むかって押し出します。
(3)肺で酸素をもらって充電(?)をすませた酸素が、また心臓へ帰ってきます。
これを受け入れるのが[C]の左心房です。
(4)さいごに[C]から[D]の左心室へ、血液を流し込みます。
[D]の左心室は、ぐっと圧力をかけて全身に向かって血液を放出します。
この繰り返しが、心臓の主な役割です。
この繰り返し作業がうまく流れないと、体の調子がくるってしまうのです。
狭窄(きょうさく)について
狭窄が、なぜ体に影響をおよぼすのか
ウィリアムズ症候群を代表する症状の心臓の血管の狭窄は、身体的影響の中でも最も深刻のものです。特に、大動脈狭窄は身体への影響が大きいため、注意が必要です。
大動脈狭窄は、そこへつながる「左心室」と心臓に栄養をあたえるための「冠状動脈」に圧力を加える原因になります。
左心室は全身に血液を送り出すために、風船のように膨らんで左心室の中を血液で満たします。そのとき、左心室全体に内側から圧力がかかります。心臓は平滑筋という丈夫な筋肉質でできています。特に左心室の外側の壁は厚くなっています。
そして、左心室はいっきに収縮して大動脈に向かって血液を放出します。このとき、正常な大動脈弁であれば、同時に弁がひらいて、左心室に満たされていた血液が流れていきます。
この瞬間に心臓や血管にかかる圧力が血圧です。こぶし程の大きさの心臓が、全身にくまなく血液を送り届ける勢いですから、この時には相当の圧力がかかっています。
大動脈弁は血液の逆流を防ぐために、心臓の外向きに開かれ,スムーズな血流を保つようになっています。
しかし、狭窄があるとスムーズな血流が妨げられます。図は大動脈弁上狭を模式的に表したものです。(緑の点線の円でかこまれた部分に狭窄が見られます)
通常、血液は人体で最も太い血管である大動脈を通過していくのですが、狭窄によりその太さが狭くなっているため血液が流れにくくなってしまいます。水の流れているホースを指で押しつぶすと、水が流れにくくなるのと同じことです。
また、血液にとっては血流を妨げる壁のような存在となり、血管の内壁沿いを流れる血液は、狭窄で膨らんだ部分に当たって、部分的な逆流を起こしてしまいます。(心雑音となってあらわれます)
狭窄部分の妨げと逆流によって、左心室には健常な状態以上に圧力がかかります。それでも、心臓の筋肉自体はこれに耐えるのですが、心臓を取り巻いている冠状動脈にも圧力が伝わります。
冠状動脈は筋肉質ではないので、圧力が伝わるとつぶれてしまい血流が悪くなります。冠状動脈は心臓に栄養や酸素を配給する役目を担っているため、冠状動脈の血流が悪くなると、心臓が機能するために必要な物質が届かなくなり、心臓の機能が低下します。
そうなると、呼吸困難・激しい動悸・チアノーゼ等の症状が生じ、命の危険にさらされてしまいます。
ただし、狭窄は程度によって、あらわれる症状が違います。多少の狭窄がみられても、日常生活には問題ない例も多くあり、運動制限がある程度で過ごせます。重度の狭窄が見られる場合には、精密検査を経て手術をします。大動脈狭窄は進行することがあるので、現状がどのような程度であっても、定期的に循環器科での検査をお勧めします。
はじめての心エコー検査
心エコー検査を初めて受ける方のために
ウィリアムズ症候群の約9割に大動脈狭窄があるといわれています。
心臓の様子を検査する最も簡単な方法は、聴診器による心音の検査です。
これは、心臓が血液を体に送り出す時の音に雑音が混ざっていないかを確認します。
狭窄があると血液が均一に流れないため、一部逆流が起こってしまいます。これは、音のみを医師の経験から判断するため、客観的な狭窄の状態が分かりません。
体に傷を付けることなく、かつ、客観的に検査できる方法のひとつが心エコー検査です。
「エコー検査」といえば、妊婦検診でする検査を思いつく方が多いでしょう。原理は同じで、超音波をあてて、その反射の程度から、内部の様子を視覚化することができます。
超音波の出力等を調節することで、様々な部分の様子を数値として得、これを画面や紙に映し出すことができます。
検査を受ける側は、検査中は安静にしておく必要があるので小児の場合は、眠った状態で検査することが多いようです。
ウィリアムズ症候群の子どもは、寝付きが悪い特徴を併せ持っていることがあるため、検査前に睡眠導入剤の入ったシロップを飲むことがあります。(それでも数時間眠らないことがあります)
検査自体は簡単ですが、初めての方は緊張することでしょう。
そこで、心エコーの様子を動画で紹介します。これで、少しでも緊張がやわらぐと幸いです。

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